今回は、今年2月25日に事業を停止し自己破産手続きを開始したN株式会社(仮称)を取り上げます。
N株式会社は、1934年創業の鋼材販売会社ですが、業界全体の市場環境が低迷する中で、長年がんばって経営努力を重ねてきた末に力尽きたケースです。
業界全体が長期に低迷し、どの企業も低い信用評価が続いているという典型的な不況業種の倒産ケースです。
会社の概要
N株式会社は、1934(昭和9)年10月に大阪で創業した中堅の鋼材販売会社です。
H形鋼、一般形鋼、平鋼などを扱うほか、関連企業を通して精密切断などの鋼材加工業務も手がけていました。高度経済成長とそれに続くバブル経済に牽引された建設需要の高まりとともに業容を拡大し、首都圏を中心に全国に営業拠点を拡大してきました。バブル期の1991年には、年間売上高約402億円を計上していました。
自己破産手続きまでの経緯
バブル経済の崩壊に伴う建設需要の冷え込みに加え、アジアからの低価格の輸入製品流入や鉄鋼原料価格の高騰などによって市場が不安定さを増す中で、業績は大幅に下落し、1999年には約13億円の最終損失を計上しました。
その後、主力行や主力取引先など関係先の支援を受けながら、営業拠点のリストラや加工設備の集約を図るなどの企業努力を続け、ここ数年はマンション需要の高まりを受けて売上高はやや回復基調になってきていました。
しかし、昨秋以降の建設市況の急速な悪化で業績が急激に落ち込んだことから、関係先の支援も限界に達し、自己破産の手続きをとるに至りました。

ポイント1 » 2005年10月、AGS格付をB7からA8に引き下げ
AGS格付けが引き下げられたと同時に、企業情報に基づくBモデルから財務情報に基づくAモデルに変更されている。
この場合は、関係先の支援を受けるために財務情報を公開せざるを得なかったと考えられる。
※企業により入手可能な情報が異なるため、財務情報に基づくAモデルと企業情報に基づくBモデルの2種類のスコアモデリングで判定している。財務データがなくても、格付けの信頼性は変わらない。
ポイント2 » コメントでは、もっとも脆弱なポイントが指摘されている
自己資本比率がきわめて低く、借り入れ依存度が非常に高いこと、資金繰りが厳しいことが把握できる。
ポイント3 » 2006年11月から最低ランクのA9が継続
A9の時期が長いため、厳しい企業実態が続いていることは取引先や周辺もわかっていたと思われるが、どうつきあうか難しいケース。
- 財務データを「非公開」から「公開」に変更するには理由がある
- コメントはよく読み込むことが必要
- 最低ランクが長期に続く場合は、与信管理規程をしっかり守る