今回は、今年3月に民事再生手続きを申請した株式会社M加工(仮称)を取り上げます。M加工は、1992年の設立以来、毎年順調に売上げと純利益を伸ばしてきた不織布加工会社で、技術面に対する評価も高く、信用リスク評価も比較的高い企業でした。
突然の民事再生手続き申請に驚いた関係者も少なくありませんでした。原因は、企業の体力を上回る設備投資によって財務体質が弱体化し、資金繰りに行き詰ったものです。投資の失敗によるバランスシートの悪化がもたらした典型的な倒産のケースとして、どのような兆候が現れていたのかを検証します。
会社の概要
株式会社M加工は、1992(平成4)年に岡山県倉敷市で設立され、独自の技術を使った不織布製品の二次加工で急成長したベンチャー企業です。
不織布製品を主体に家庭用雑貨、包装資材等も扱い、商品開発と技術力に力を入れてきました。取引対象はアパレルや家庭用雑貨、包装材クリーニング、通信販売、建材、医療など多岐にわたり、順調に売上を伸ばしてきました。
民事再生手続きまでの経緯
積極的な事業展開や技術開発の一方で、設備投資や開発費を借入金に依存しており、2008年6月期は過去最高となる年売上高約25億7700万円を計上したものの、借入金残高は約20億円に拡大していました。さらに取引先への多額の金融支援を実施したことも、有利子負債の膨張を招きました。昨年9月頃から景気減速の影響もあって、受注は大幅にダウンし、売上不足から運転資金に窮するようになり、資金繰りが急速に悪化したことから、民事再生を申請するに至りました。

ポイント1 » 2006年10月、AGS格付をA7からA8に引き下げ
順調に売上げ、経常利益を伸ばしていた時期で、他の信用格付けや評点では高い評価を受けていたが、売上げ規模に比べて借入金残高が膨張したことをうけて引き下げ。
ポイント2 » 2008年10月には最低ランクのA9に引き下げ
世界同時不況の影響を受けて受注が減少。
企業の体力を上回る有利子負債があることから倒産確率の高い最低ランクへ引き下げ。
ポイント3 » コメントとスコア判定結果で財務体質の悪化を判断
コメントでは、借入金が資産水準、売上水準に比べて大きいことを明示。
スコア判定結果でも「効率性、キャッシュフロー」の項目の評価が低く、キャッシュフローが薄いため資金繰りが厳しいことが見て取れる。
- 売上げ、利益が順調に伸びている企業でも、ランク引き下げは要注意
- P/Lがよくても、B/Sが悪い企業は要注意
- 有利子負債が、企業の資産や売上水準に見合っているか
- 信用リスク情報は、いくつかの情報をチェックして比較