2009年上半期の個人事業主を除く法人企業全体の倒産数は約7000社にのぼっている。(東京商工リサーチ社データより)
うち(個人事業主や判定対象外業種、データがない先については判定対象としていない)「AGS企業リスク格付」で判定可能な企業のうちの倒産先は半数の3524社となっている。
2008年下半期の3500社と比べ、全体では横ばいといえる。
ただ、業種別に見ると、様相は変わる(表参照)。
建設業や小売業の倒産が大きく減少する一方、製造業や卸売業の倒産数が大幅に増加しており、製造業の倒産増加傾向は続いている。建設業では政府による救済策の効果で減っているものの、製造業では自動車不況の影響が色濃く出ていると見られる。
減ったとはいえ、建設業の倒産数は高水準であり、政府の救済策効果が薄れる夏以降の動向には注意が必要だろう。
【参照】 AGSが2003年~2007年の倒産件数に基づいて計算した「倒産率の実績」 ※別ウィンドウで開きます
「売上高総利益率(粗利)」「売上高営業利益率」「売上高当期利益率」の3つの変化を見ることが基本になる。
各比率間の比較や、増減を把握し、その要因を分析することが重要だ。具体的には、「売上高総利益率」を見る場合、売り上げと原価の関係に大きな変化がないかを見る必要がある。
また、「売上高営業利益率」が「売上高当期利益率」を下回る場合は営業外収益の詳細を注意深く見る必要がある。
逆に「売上高営業利益率」が上回る場合は売上高に占める金融費用(支払利息・割引料等)の比率を見ながら、金利負担が重荷になっていないかをチェックする必要がある。
加えて借入金が企業体力に比べ過大になっていないのか。借入金を増やして企業を成長させていくパターンもあるので、一概に比率だけで論じることはできないが、前期と比べたり、同業種と比べたりすることで、借入金が適正な範囲内にあるかどうか見極められる。
持ち株会社へ移行する企業が増え、また日立によるグループ5社の完全子会社化など、連結決算の重要性がますます増している。親会社の姿が表面的によかったとしても子会社の状況がよくなかったりする場合は少なくない。そうした細かいリスクも今後見ていく必要があるだろう。
これまで連結企業の倒産という事態はまれだったが、こうした社会の変化に対応して、(ニューラルネットの技術でモデルを作成している)「AGS企業リスク格付」でも、今後、連結企業のモデル作りに取り組んでいきたいと考えている。
中小企業は情報開示義務のない非上場企業がほとんどだが、民間信用調査機関の求めなどに応じて、企業情報や財務データを開示して企業社会の要請にこたえている。
ところが、財務データの開示を取りやめたり、情報開示に対する一貫した姿勢が定まっていない企業もある。
AGSでは財務情報を公開している企業を「Aモデル」、企業概要だけ出している企業を「Bモデル」と格付しており、最新の格付と最大過去4回格付履歴も見られる。
Aモデルが突然Bモデルに変わっていないか、そうした観点でのチェックも今後必要になってくる。