今回は、今年2月に民事再生手続きを申請したニチモ株式会社を取り上げます。
このケースは、市況の悪化によって急激な資金ショートをきたし短期間で倒産に追い込まれた典型的なリクイディティー型倒産です。このようなケースの場合、どのように予兆を見付けることができるのでしょうか。
会社の概要
同社は、1955(昭和30)年9月に大阪市で設立された「南海ブロック」が前身です。翌年に社名を「大阪モデル住宅」に変更し、分譲住宅の施工販売を開始しました。
1960年に社名を「日本モデル住宅」に変更し、1965(昭和40)年に東京市場に進出しました。1971(昭和46)年に大証1部に株式上場、1973(昭和48)年には東証2部にも上場し、1977(昭和52)年に現在のニチモ株式会社に社名変更しました。同社は、マンション分譲業者としては老舗で、中高層の自社マンション分譲業務を中心としていました。
民事再生手続きまでの経緯
同社は、近年のマンションブームを追い風に業績を伸ばし、2007(平成19)年9月期の売上は連結ベースで665億1100万円、当期利益26億 9800万円を計上していました。
しかし、世界的な金融危機などによって国内不動産市況が急激に悪化。2008(平成20)年9月期には年商が前期比 46.8%減となり、102億5600万円の当期純損失を計上するとともに、決済資金の目処が立たなくなり、平成21年2月13日、東京地裁に民事再生手続開始を申請しました。

ポイント1 » 好調な決算を発表していた2007年末の時点ではC2
この時点では、一般的には倒産の兆候はあまり見当たらない。
ただしこの時点で、「財務評価」の「規模」と「流動性」以外の項目が最低評価の1となっていたことに要チェック !!
ポイント2 » マクロ環境の悪化により平成20年8月から評価が継続的に低下
不動産業のマクロ環境の悪化をうけて、平成20年8月に評価がC4となった後、9月にC5、10月にC6と継続的に評価が下がっている。
ポイント3 » 最終的な業績の悪化をうけて平成21年1月にC10へ
100億円の損失を計上するなど財務の悪化をうけて、最低評価のC10まで低下。倒産確率は平均で13.17%、下ブレのシナリオでは26.08%と非常に高い値になった。
- 高い評価を受けている企業であっても、外部要因などにより急変する可能性がある
- リクイディティー型倒産を察知するためには、継続的な観測が重要
- 分析の基本として、財務評価で1が多い場合には注意が必要