ビジネススキルアップ連載 シンプルにまとめる!ストレートに伝える!企画書・提案書作成講座

第3回 文章表現やレイアウトでロジカルに魅せる

企画書・提案書で一番大切なのは、もちろん内容です。前回までの講座で、ストーリーの組み立て方と納得感をアップするコツを解説し、皆さんの企画は論理的に矛盾がないか、受け手の立場で納得できるか、チェックするヒントをご紹介しました。それでは、内容がすばらしければ、すぐに相手に伝わるでしょうか?これは受け取る側の感度にもよるのですが、表現方法によって理解度や納得感に差が生じます。同じことを言っているのに、表現の良し悪しで評価が分かれてしまうことはよくあります。ちょっとしたポイントに注意するだけで伝わり方が変わるので、知っておいて損はありません。第3回の講座では、文章表現やレイアウトのコツをご紹介します。

1. 正確・簡潔・わかりやすい文章

企画書・提案書に限らず、ビジネス文書であれば、正確・簡潔・わかりやすい文章が基本です。

まず、正確な文章とは、事実が受け手に正しく伝わる文章です。

● 内容が正しい -記述内容、固有名詞、数値データなど
● 言葉の使い方が正しい -敬語表現や文法が正しい、表現にバラツキがない
● 事実を伝えるために必要な程度に、具体的なデータが示されている

内容に間違いがあったのでは、ビジネス文書として意味を成しませんので、内容が正しいというのは大前提ですね。言葉の使い方も、敬語表現や文法が正しいのは言うまでもありません。

表現のバラツキとは、文中で同じ物事を表現する言葉が複数あることです。例えば、研修について説明するときに、「研修」「講座」「セミナー」「教育」といった言葉を、特に明確な切り分けなく使うと、違いがあるのかないのか、何が言いたいのか、あいまいになります。未整理で非論理的な印象を与えるので、同じ物事はひとつの言葉で統一して表現します。

具体的なデータを示すというのは、あいまいな表現ばかりでは事実が正確に伝わらず、相手に納得してもらえないからです。

以下の例で見てみましょう。日本国内でのレジャー産業の動向を調べるために、国内2大レジャー施設である東京ディズニーリゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの動向を整理した資料です。伝えたいメッセージは「過去2年間、いずれも好調である」です。それを正確に伝えるために、最低限何を示したらよいでしょうか?

【改善前】

改善前の例では、それぞれの施設の動向について「過去最高の来場者数」「来場者が増加」「開園当初の水準に迫る勢い」など概況を語っていますが、具体的なデータが示されていないので説得力がありません。最低限、売上高、来場者数程度はインターネットで情報収集できるので、具体的な数字で示します。改善後は次のとおりです。

2011年と2012年の売上高と来場者数を具体的なデータで比較し、成長率も計算して補足してあります。2012年好調だった理由のトピック(新アトラクションの導入など)も簡単に記述しています。

「過去2年間、いずれも好調である」に納得してもらうだけなら最低限はこの程度ですが、これ以外にも、利益率、客単価、ターゲット層の変化など、伝えたいメッセージによって情報を収集して加えてもよいでしょう。

【改善後】

次に、簡潔な文章とは、整理されたシンプルな文章です。

● 余計な修飾語・冗長な表現がない
● 短文で書かれている

ビジネス文書は、できるだけ短い文章で書いたほうが、受け手が読んで理解する時間を節約できます。自分が書いた文章を必ず見直して、削除しても意味が通じる言葉がないか、チェックしましょう。「短く削るぞ!」という気持ちで、よく読み返すのです。余計な修飾語・冗長な表現を削っていくと、自然と短文になるはずです。日本語の場合、一文が長くなればなるほど、主語と述語が離れるので、理解に時間がかかります。一文の長さの目安は、長くても80文字以内です。30~50文字くらいの文章を中心に記述できるとテンポよく感じます。受け手の読みやすさを考えて、読点(、)を適宜入れます。

最後に、わかりやすい文章とは、受け手にとって理解しやすい表現の文章です。

● 専門用語や略語を多用しない
● 漢字とひらがなの使い分けが適切である

皆さんも、専門用語や略語の意味が分からず、プレゼンテーション中ずっと気になって話に集中できなかった、という経験がありませんか?受け手にとって理解できないかもしれない専門用語や略語をはじめて使用するときは、文中または文末に注釈を書き加えるなどの配慮が必要です。専門用語を使わないほうが分かりやすい場合もあるので、受け手に合わせて言葉を選びます。略語は、必ずフルスペルや正式名称を書き加えます。

漢字とひらがなの使い分けが必要な理由は、言葉の意味を伝わりやすくするためです。ひらがなで書くと、同じよみがなで意味が違う語は文脈から判断することになります。漢字で書いてあれば、すぐに意味がわかりますね。一方で、漢字を多用すると読めない人もいますし、文章を見たときの印象が「難しそう、読むのが面倒」となります。適度に使う目安として、文化庁が定義している常用漢字表とともに発行されている「公用文における漢字使用等について」があります。一般の社会生活において、現代の国語を書き表すための漢字使用の目安を示していますので、参考にするとよいでしょう。

企業においても、自社が公式に外部に発行する文書(例えば、新聞に掲載する公告、各種パンフレット類など)での漢字使用ルールを厳密に決めているところもあります。正確な文章の説明でもふれたように、使用している語がバラついていると未整理な印象になります。漢字とひらがなの使い分けも、少なくとも、同じ文書のなかでは統一するよう気をつけます。目立つのは「お客様」「お客さま」、「皆様」「皆さま」、「申し上げます」「申しあげます」といった、よく使用する語のバラツキです。

参考:文化庁「公用文における漢字使用等について」

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