ビジネススキルアップ連載 シンプルにまとめる!ストレートに伝える!企画書・提案書作成講座

第2回 集めた情報をわかりやすく整理する

3.ベンチマーク結果をわかりやすく整理する

課題に対して解決策を提示するのが企画・提案です。そこで、さまざまな解決策が想定できるなかで「なぜその解決策なのか」を、きちんと説明する必要があります。効率的によりよい解決策を見つけ出す一つの方法として、よく使われるのが他社のベンチマーキング-優れた事例を学び、それを基準として自社の進め方を検討する経営手法-です。どの企業に学ぶかは、その場合によって検討しますが、一般に優良企業と評価されている企業、業種に関わらず調査したい業務において先進的取り組みをしている企業、同じ業界内のトップ企業など、いろいろ当たってみて、目的に合った対象を選定します。

ベンチマーキング結果をわかりやすく整理するには、評価項目を統一して比較します。単に各社の取り組みをダラダラ記載したのでは、すべて読まないとポイントが理解できません。

以下の例で考えてみましょう。

製造業であるB社では、近年、開発拠点、製造拠点をアジアに移し、販売会社もアジア各国に設立、売上高に占める海外比率は昨年30%を突破、3年後には50%を目指している。

急速なビジネスのグローバル化に対して、日本国内の社員のグローバル化が追い付かず、海外拠点に派遣する人材の不足が悩みの種である。これまでも限られた人数ではあるが、海外留学制度によって育成に努めてきたが、時間や費用がかかるわりに求める人材の育成が進んでいない。グローバル人材育成について、他社の取り組みをスタディし、自社の進め方を検討することにした。

ベンチマーキング先としては、社内で検討した結果、働きやすい会社2012において人材育成面での評価が高く上位にランクインした同業他社から、日立製作所、東芝を選んで自社と比較するとともに、業種に関わらず先進的な取り組みがあれば情報収集することにした。

実際にベンチマーキングするときは、細かい調査項目を整理して、可能であれば訪問してお話を伺いますが、情報検索によって調べられることは事前調査します。

以下のようにいくつか切り口を決めて情報を整理すると、比較しやすいのでお勧めです。

ここでは、日経テレコンの記事検索を使って、過去1年の新聞・雑誌記事から情報を収集します。

項目 B社 日立製作所 東芝
主な強化対象 勤続6年以上15年未満 主任クラス以下の若手社員育成を強化 若手(入社15年目まで)
幹部候補
強化ポイント 語学力
MBA取得
語学力
現場対応力・実践力
語学力
現場対応力・実践力
教養(自国・他国の文化理解など)
手段 TOEIC受験支援
社内英会話スクール
米国海外留学制度(2年)
海外研修制度
国際ボランティア派遣(NPO法人ICYE JAPAN等と11年度より提携)
新興国での就業経験(NPO法人クロスフィールズの仲介により現地NGOと連携)
海外留学研修(若手)
海外業務研修(若手)
リベラルアーツ教育
(5年目以降節目)
海外(シンガポール)での幹部社員研修
特色 海外留学制度は費用が掛かることから年間数名の派遣に留まる。 11年度から海外研修制度を大幅拡充、2年間で2000人を派遣。ボランティア休暇制度により過酷な環境で、自力で対応する力を強化。
国内でも海外でも臆せず挑む「意志」と「覚悟」のある人財へ。
相手の文化を理解し、同時に日本のことも理解しなければ、グローバルな舞台で意思疎通はできないとの考えから、リベラルアーツ教育に注力。
人事制度
採用活動
未整備。帰国後のキャリアパスが不明確で人材活用できていない。 世界共通の人事制度・評価制度により、グローバル人材活用を推進。海外留学生採用も積極的。 グローバル化加速のために2013年外国時新卒採用を対前年3割増。海外留学生採用も積極的。

いくつかの記事を検索してみると、キーワードが見えてきます。この例では、語学力強化は当たり前のこととしてあまり記事には取り上げられていませんが、企業のグローバル人材育成は、「早い段階から着手(若手)」「MBAなどの資格より実践力強化」「人間力強化(自国・相手国両方の文化理解、教養)」「欧米からアジアへ」「長期(数年)から短期(数か月・数週間)へ」「留学の守られた環境から業務派遣やボランティアなど過酷な環境へ」など変化の兆しが見えます。

キーワードが掴めたら、各社のHPをチェックしたり、他業種でも同様の取り組みがないか検索します。調べたことを比較表に追加していくと、ポイントがわかりやすいでしょう。表形式は、非常にシンプルな表現方法ですが、情報を比較するには大変有効です。

いかがでしょうか?

第2回は、ストーリー構成のなかで重要なポイントとなるWhyの納得性を高めるために、実際に集めた情報をわかりやすくまとめる方法を紹介しました。次回以降は、文章、図、グラフ・表、写真など、さまざまな表現方法を使ってビジュアル・ロジカル・リアルに企画・提案を受け手に伝えるテクニックを解説する予定です。

使用した記事

  • 働きやすい会社2012、本社調査――パナソニック、再び首位、グローバル人材育成。
    2012/09/30 日本経済新聞 朝刊 7ページ 1959文字
  • 日本人いない地で過酷な体験、ボランティア、自分を鍛える(キャリアアップ)
    2012/09/11 日本経済新聞 朝刊 33ページ 2136文字
  • 仕事に生きるこの資格(2)英語力、会話をより重視――交渉で使えるスキル必要。
    2013/04/03 日経産業新聞 18ページ 1978文字
  • 「留職」で若手社員鍛練 新興国で社会問題と対峙
    2013/07/29 06:30 日本経済新聞電子版セクション 2406文字
2012/09/14
日刊工業新聞 21ページ 424文字
2013/08/03
週刊ダイヤモンド 100~107ページ 9754文字
2013/04/13
FujiSankei Business i. 3ページ 1101文字
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筆者 山崎 紅氏が作成した「企画書・提案書作成に使えるフォームやチャート」を各回プレゼントします。
第2回は、PEST分析用フォームとベンチマーキング結果比較用フォームを無料でダウンロードいただけます。
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山﨑 紅 氏
富士ゼロックス株式会社
10年間のSE部在籍後、人材開発部門へ異動、ソリューション営業力強化T長、人材開発戦略G長を経て、人材開発コンサルタントとして活動中。コミュニケーション力強化、問題発見/課題解決力強化を得意とし、「ビジネスコミュニケーション」「説得できるプレゼンテーション」「ソリューションのための見える化」「ロジカルシンキング」といった人気コースをはじめとして、日経ビジネススクールなど講演多数。民間企業、官公庁、大学、各種教育機関などで幅広く指導。主な著書に、「説得できるプレゼンの鉄則 PowerPoint上級極意編 第二版」*「ロジカルシンキングのための見える化入門」「ミニひと目でわかるPowerPoint2010 ロジカル、ビジュアル、リアルプレゼン50のポイント」「社会人基礎力講座」(以上、日経BP社 )「勝てる企画書」秀和システムがあり、数冊が台湾・韓国でも翻訳出版されている。

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