ビジネススキルアップ連載 シンプルにまとめる!ストレートに伝える!企画書・提案書作成講座

第1回 ストーリーの組み立て方

2.骨子を考える

企画書・提案書を作るには、前述のストーリー構成を意識しながら、骨子を決めます。細かい部分を作り込むのは、骨子が固まってからです。What・Why・Howの構成を、おおざっぱにまとめて、論理展開に無理がないか、話がつながっているか、確認します。

それでは、以下の例で考えてみましょう。

A社では、近年、自社を取り巻くビジネス環境は厳しさを増し、同業他社の攻勢も激化しており、このままでは生き残れないという危機感を強く持っています。業績の低迷が続いている原因のひとつとして営業力不足があり、営業プロセス改革は経営方針の大きな柱のひとつです。課題解決型営業としてお客様との信頼関係を構築し、営業成果を上げるために、教育プログラムを充実させたり、SFA(営業支援システム)を導入するなど様々な施策を行っていますが、なかなか思うように進みません。現状分析の結果、営業部門では以下の悪循環に陥っており、営業プロセス改革を進めるには、この連鎖を断つことが急務です。

① 成約率が低く利益率も低いため、営業は目標達成のために下手な鉄砲を打ちまくる
② 営業の工数が足りなくなる
③ 担当市場・業界・お客様に関する情報収集・分析を行う時間も気力もなくなる
④ お客様の課題を理解しないまま、単なる御用聞き型営業になる→①へ戻る

そこで、営業推進部では、多忙な営業が、限られた工数のなかでお客様の課題をよく理解して、その解決を実現する提案ができるように、効率的・効果的に市場やお客様の情報を収集・分析できる情報活用環境構築を提案することにしました。

実現手段については、コンテンツ(情報の中身)と、ツール(情報を入力したり閲覧する道具)の両面から検討した結果、信頼性の高い情報サービスの導入と、モバイル端末の配布を行うことにしました。

あなたなら、What・Why・Howをどう整理しますか?

よくない例からみてみましょう。

【よくない例】

What

  • 効率的・効果的に市場やお客様の情報を収集・分析できる情報活用環境構築

Why

  • 情報活用環境が整っていないので、営業部員が効率的・効果的に市場やお客様の情報を収集・分析できないため、環境整備が急務。

How

  • 信頼性の高い情報サービスの導入と、モバイル端末の配布

いかがでしょうか? ストーリーが流れているように見えるなら、要注意です。 Howが適切な実現方法であるかは置いておくとして、問題はWhatとWhyです。「Aが必要です。なぜなら、Aがないから」というのは、論理的とはいえません。何のためにAが必要なのか(目的)、なぜ必要なのか(根拠)、明確にする必要があります。改善例をみてみましょう。

【改善例】

What

  • 営業プロセス改革のための情報活用環境構築

Why

  • ビジネス環境は厳しさを増し、同業他社の攻勢も激化、業績は低迷
  • 業績を上げるために営業力強化は必須であり、営業プロセス改革に取り組んできた
  • 現状分析の結果、営業がお客様の課題を十分理解せずに提案するプロセスが問題
  • お客様の課題を解決する提案を行うプロセスに変えるには、営業が効率的・効果的に市場やお客様の情報を収集・分析できる環境を用意する必要がある

How

  • 信頼性の高い情報サービスの導入と、モバイル端末の配布

Whatでは、営業プロセス改革を進めるために情報活用環境構築が必要だ、と目的を明らかにします。よくない例では、効率的・効果的に市場やお客様の情報を収集・分析できるようになるのが目的のようにみえますが、これは目先の効果でしかありません。それによって何を目指すのか、大きな目的と紐付けて企画・提案の重要性をアピールします。

Whyでは、そもそもなぜ営業プロセス改革を推進することが重要なのか、自社を取り巻く環境や自社の業績低迷の原因を再確認してから、なぜ営業プロセス改革を進めるために情報活用環境構築が必要なのかを説明します。

いかがでしょうか? 簡単な例で、最も陥りやすい論理展開の間違いを紹介しました。「Aが必要です、なぜならAがないから」という企画書・提案書を書いていませんでしたか? 「○○(目的)のためにAが必要です。なぜなら、△△(根拠)だからです。具体的には、××という方法で実現します。」という当たり前のストーリーになっているか、よく考えて骨子を決めましょう。

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