第1回 ストーリーの組み立て方
骨子が決まったら、論理展開に無理がないか、納得できるか、ひとつひとつ検証し、受け手の立場に立って必要な説明を肉付けしていきます。
前述の例で、考えてみましょう。
What
Why
How
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まず、背景となるWhyを確認します。
「ビジネス環境は厳しさを増し、同業他社の攻勢も激化、業績は低迷」は自社を取り巻く環境と自社の状況を言っています。マクロ環境分析、同業他社の動向調査、自社の業績情報について、具体的なデータを収集して示せば、危機感を共有できるでしょう。
問題は、そこから先です。「現状分析の結果、営業がお客様の課題を十分理解せずに提案するプロセスが問題」「お客様の課題を解決する提案を行うプロセスに変えるには、営業が効率的・効果的に市場やお客様の情報を収集・分析できる環境を用意する必要がある」とありますが、営業プロセス改革が進まない理由が、本当にここにあるのか、つながりがはっきりしませんね。「営業が効率的・効果的に市場やお客様の情報を収集・分析できるようになれば、お客様の課題をよく理解して的確な提案を行う営業プロセスに変わり、業績アップに貢献できる(という仮説が成り立つ)」ことを、現状分析結果から丁寧に説明する必要がありそうです。ここで「確かに営業が効率的・効果的に市場やお客様の情報を収集・分析できるようになることが重要だ」と納得してもらえれば、Whatの「営業プロセス改革のための情報活用環境構築」は受け入れることができます。
次に重要なのが、Howとのつながりです。「営業プロセス改革のための情報活用環境構築」を実現する手段が、本当に「信頼性の高い情報サービスの導入と、モバイル端末の配布」なのか?ということです。資料にどこまで組み込むかは別として、なぜこの手段なのか、他にも手段がないのか、これで十分なのか、費用は妥当か、スケジュールは妥当か、といった受け手の疑問に答えられるように、準備が必要です。その手段を選んだ理由があるはずですので、その選定プロセスや理由を説明しましょう。
これらの観点から骨子に肉付けした例は、次のとおりです。
What
Why
How
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このように、ストーリーのつながりを確認しながら、必要な情報を肉付けしていきます。なお、重要なのは、あくまで「シンプルに書く」です。結論を導き出すために最低限必要な根拠として具体的事実を示す、という点に注意して資料を作成しないと、あっという間に山のような参考資料が加わることになります。作り手の作成時間も、受け手の内容理解・意思決定時間も余計にかかって無駄ですから、あれもこれもと付け加えすぎないようによく考えてください。