ビジネススキルアップ連載 シンプルにまとめる!ストレートに伝える!企画書・提案書作成講座

第2回 集めた情報をわかりやすく整理する

2.現状分析結果をわかりやすく整理する

PEST分析は、世の中の大きな動きを捉えるのが目的であり、この企画・提案の方向性が適切かを判断する一つの材料になります。この企画・提案で解決しようとしている課題は、世の中の動向と照らし合わせてみたときにも、取り組むべき重要課題であると説明するために使います。

しかし、それはあくまで一般論であり、受け手にこの企画・提案の重要性や妥当性を強く認識してもらうには、自社に置き換えて具体的にイメージできる説明が必要です。これは確かに「自社にとって」重要だ、と感じてもらえれば、企画・提案への納得感が増します。自社では何が起きているのか、現状分析して問題を明らかにし、その問題を解決するために何に取り組んだらよいのか、この企画・提案のテーマへとストーリーをつなげます。現状分析が不十分だと、「本当に自社にとって必要なのか?」という疑問がぬぐえません。Whyの裏付けとして、PEST分析のようなマクロ環境分析結果を示すのは、大きな方向性を示すには有効ですが、自分のこととして納得してもらうには、自社の現状分析結果を見せるのが効果的です。

それでは、以下の例で考えてみましょう。

A社では、かねてより情報セキュリティ対策に積極的に取り組んでおり、電子媒体での情報管理はかなり整備されてきた。しかし、現実的には、情報流出のリスクは紙媒体にもあり、情報セキュリティ部門では、その対策の遅れに不安を感じている。そこで、紙媒体での情報セキュリティ対策について検討し、提案することにした。

こうした状況で、あなたが提案の受け手だったとしたら、以下のような世の中の動きを説明されて、すぐに自社でも紙媒体の情報セキュリティ対策のしくみを導入しようと決断できますか?

  • 個人情報保護法、不正アクセス禁止法、電子署名認証法、e-文書法など、情報セキュリティに関連する多数の法律が制定されて以降、企業の情報セキュリティに関する責任が増大、意識も高まっている。
  • 情報漏えい事故を起こした場合の企業の損害は計り知れない。億単位の損害を被った企業も少なくない。
  • 多くの企業では、ICT(情報通信技術)を活用して社内のPCを管理し、故意または過失による電子データ流出を防ぐ対策を行っているが、電子媒体に比べると紙媒体での流出への対応はそれほど意識されていない。
  • 文書単位やユーザー単位で出力操作を制限できるシステム、複写すると隠し文字が印刷されてコピーだと分かる技術、重要書類を持ってゲートを出ようとすると識別できる技術など、さまざまな技術革新が進んでいる。

確かに、適切な情報セキュリティ対策は企業の責任として重要であり、紙媒体による情報漏えいへの対応が必要であることもわかります。しかし、それだけでは、説得材料として弱いのです。以下のような現状分析結果を示すことで、受け手は危機感を持って「紙媒体の情報セキュリティ対策」という課題をとらえ、自社にとっての重要性を強く認識します。

  • 現状のプロセス整理:現在の紙媒体管理はどうなっているか?
  • 問題点の洗い出し:現在の管理方法における問題点はどこにあるか?
  • 要因分析の特定:なぜその問題が起きるのか?
  • 課題の提起:あるべき姿に向かって、何に取り組んだらよいのか?
  • リスク試算:どういう情報が紙媒体での流出のリスクにさらされているのか?
    (文書の種類と、内容の重要度)
    万一流出した場合の被害はどの程度か?
    (お客様への影響、自社の信頼への影響、情報漏えい事故への事後対策コスト等)

このように、現状のプロセスを整理し、問題点を洗い出し、要因を特定し、取り組むべき課題を明らかにすることで、Why-この企画・提案はなぜ必要なのか?-納得感を高めるのです。その課題解決に取り組まず放置すると、どういうリスクがあるのかを示し、危機感を持ってもらう方法もあります。

現状分析結果を示すのは、「自分のこととして具体的にイメージしてもらう」ことにつながります。世の中でよく言われている課題ではなく、自社の現実として今ここにある課題だと具体的に理解してもらうのが、成功の秘訣です。

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