代金回収できない場合にまた来月に支払ってもらえればいいですと妥協することがある、取引先に嫌われたくないと気をつかって決算書等の資料提出を要求できないことがある等の声を多く聞きます。言語道断です。「代金回収までが販売である」ことを肝に銘じていれば、変な妥協も気づかいも一切不要であることが分かるはずです。
また、「お客様は神様」であまり強くは出られないということを良く言われますが、「お金を払わない人はそもそもお客様ではない」のだから、必要な場合は事情を説明して情報開示を要求し、堂々と代金回収をして、嫌がられたら、もっと良い内容の取引先と出会えるように努力した方が良いと思われます。
旧商法では1年間の経営成績の報告をまとめることを義務付けており、それを「営業報告書」(会社法では「事業報告書」)と言いました。まさに営業とは経営のことであり、売るだけでは経営は成り立ちません。現場の営業マンを自認する人は、社内の仕組みにも気を配りながら(社内営業)、取引先に相対することが重要なのです。
そして、販売から代金回収までの仕組みを営業部門が責任を持って作り上げることが強い会社を作っていくのです。
営業活動と与信管理は切っても切れない非常に密接な位置づけにあります。いわば車の両輪であり、その車軸が顧客である取引先企業です。与信管理は管理部門に任せて営業部門の担当者は販売活動に専念すればいいというのは間違いです。
管理部門が分析する情報の大半は、営業担当者または調査会社が集める情報に過ぎず、現場の状況は営業マンにしか分からないのです。与信管理の主役は、営業マンといっても過言ではなく、営業マンの能力アップが会社の守りを強くするのです。
いつもと様子が違うな、他の取引先と違うななど、時系列での比較や同業他社との比較を行うことで、その会社の姿が浮き彫りになっていくのです。
そして、取引先の異常に気づいたときにすぐに対処していくことが現場の担当者に与えられた役割でもあるのです。
与信管理強化に取り組めば、販売先について詳しく情報を集めなければなりません。しかし、このような販売先をよく知ることが次の受注に結びつくことにもなっていきます。販売先から「ウチの会社のことをよく知ってくれている、ニーズを的確に察知してくれている」と評価されれば、その営業担当者から商品を買いたいと思うのは当然です。課題を解決する提案を持ってきてくれる営業担当者を断ることはありません。
決算書や信用調書を読むことで、販売先が何を課題として抱えているのか、今後どのような方向性で経営をしようとしているかなど問題点や計画を明らかにすることができます。その問題点や計画に「販売先のニーズ」があり、それに合った提案ができれば売上を上げることができるのです。
販売先が求めているものは、在庫の削減か、売掛金の回収早期化か、グループ経営の効率化か、または運送費の削減か、それとも外注費の削減か…。決算書を時系列比較、他社比較すれば自ずと課題が見えてくるものです。
与信管理のポイントとして、経営者に会う機会があれば経営状態をヒアリングすることを書きましたが、何もフィードバックがなければ話しても無駄だと思われてしまいます。「他社ではこうなっています」、「その課題にはどのような商品がお勧めです」など専門外の情報でも販売先がほしがっているような情報を集めて持っていくことでさらにヒアリングの精度が上がっていきます。
ぜひ与信管理を強化し、それを営業の拡大に結びつけ、「攻め」と「守り」を同時に強化できる仕組みを構築していってください。