契約が終わると、取引が開始されるわけですが、与信管理はここで終わりではありません。むしろここからが本番といっても過言ではありません。
販売代金を確実に回収できるように、販売先を継続的に管理する仕組みを構築していく必要があるのです。具体的には債権管理や限度管理によって販売先を管理するとともに、情報収集を加えることで取引を見直していく仕組みになります。
与信管理においては、販売先を常日ごろから管理し、販売代金を確実に回収することが目的ですので、債権管理や限度管理といった継続管理のプロセスを着実に実行していくことが重要です。
営業部門においては、「代金回収なくして売上なし」ということを肝に銘じて取引を行う必要があります。販売先との間で決められた取引条件通りに販売代金を取引先から回収することが求められます。
またさらに一度社内で承認された与信限度を超過して取引を行うことは社内ルール違反であることを意識しなければなりません。常に債権残高に注意して与信限度を超過しないように営業活動を進めることが求められます。そして、万一販売先が倒産しても貸倒債権残高を与信限度より少ない金額に抑えておくようにします。
債権管理と限度管理を徹底することで、その異常が表れた場合に注意深く分析することで、危険を回避することができるようになります。
契約上の商品を条件通りに引き渡し、当該商品の所有権が販売先に移った時点で、取引先に対する債権に変わります。支払条件が「前渡金条件」ないしは「現金交換条件」であれば別ですが、「受渡後何日後支払」という条件の場合は、債権を回収するまでは債権の期日管理を行い、期日通りに入金されるかに注意が必要です。
手形回収の場合は、手形期日(手形決済日)や振出人の確認はもちろん必要ですが、手形を回収する期日にも注意します。特に、要注意先から裏書譲渡手形(廻し手形)で回収する場合は、債権保全策となりますので、取り決めた回収日にきちんと回収することが重要になります。
特に回収に異常が起こった場合は、販売先の資金繰りに異常が生じている可能性があり、危険な兆候となる場合があります。
限度管理においては、与信限度内での取引が行われているか、与信限度が未設定の販売先や、与信限度を超過している販売先がないかが確認項目となります。
与信限度を超過するということは、当初見込んだ販売量を超えて商売が行われているということになり、その原因を突き止める必要があります。もし競合他社が取引先の異常をつかんで撤退した分が自社に流れてきているということにでもなれば大変なことになります。
債権残高と与信限度を比較してその使用率が分かる、または使用率が高い(90%超など)取引先には印を付けると分かりやすく、営業部門が取引を絞るか、与信限度の増額申請を行うかをスムーズに検討できるようになります。
債権管理・限度管理を効率的に行うには、できれば販売先ごとに取引限度、債権残高、債権実績推移、手形残高明細等が即時に確認できるような債権管理システムの構築が望ましいでしょう。
具体的には、次に挙げる帳票類をタイムリーに作成できるような仕組みを整備することが望ましいといえます。
債権残高推移表
個々の販売先に対する売掛債権の残高推移が分かるようにします。債権の発生と回収の推移を見ることで、季節変動の発生しやすい取引先かそうでないか、債権が急増していないかどうか等を確認することができます。
毎月定期的に以下のような与信異常先のリストを抽出します。与信異常先は以下のものとします。営業部門はそれぞれに対して対処するようにします。
- 与信限度切れ先・・・与信限度の期限が切れている先を表示。
- 限度未設定先・・限度設定のない先を表示。
- 限度超過先・・与信限度金額超過先を表示。
- 回収遅延先・・債権回収が遅延した先を表示。