信用調査会社の東京商工リサーチの調べによると、2008年の倒産件数は3年連続の増加となっており、今年に入ってからも増加基調が続いています。上場企業の倒産も33件で過去最高となり、与信管理の重要性は非常に高まっております。
取引先の倒産は焦付きという損害をもたらし、努力して積み上げた利益が一気に損なわれます。また倒産に至らなくても代金回収のトラブル処理は、手間がかかることに加え、後ろ向きの気持ちで作業を行なわねばならず、売上を上げるよりも膨大な労力・コストがかかることになります。
したがって、現場の営業担当者は、社内の仕組みにも気を配りながら(社内営業)、取引先に相対することが重要です。そして、販売から代金回収までの社内の仕組みを営業担当者が責任を持って作り上げることが重要です。
前置きが若干長くなりましたが、与信管理をする際に、現場の担当者、決裁者が行うべきリスク管理手法とその考え方について説明していきたいと思います。
新規取引や取引の増額が行われる場合は、そもそも販売先がなぜその取引が行われるようになったのかという理由について確かめることが重要です。
特に販売先を紹介された場合などは、なぜ販売先を紹介してくれるのかということをよくよく考えなければなりません。儲かる取引であれば自分でやれば良いのではないかという考え方もあるからです。うまい話に乗って、調査することなく取引を始めたりすると、後々トラブルになることもよくあります。
関係会社から紹介された販売先でも、取引するのは自社ですので、注意して取り組むようにしましょう。
まず、取引相手は、本当にあなたが取引相手と思っている先なのかということをまず気を付けなければなりません。取引相手が会社なのか個人なのかわからないようなケースや、取引にブローカーが絡んでいて取引相手が分かりにくいケースなどは特に注意が必要です。本当に自分が取引しようと思っている相手は実在するのかなどを確かめて取引を行なわなければ、取り返しの付かないことになります。
さらに商談相手が契約締結の権限があるかどうかも確認しておく必要があります。通常、契約締結の権限を持っているのは、会社の代表者か、または代表者から代理権限を与えられた者となります。営業部長、支店長などの役職名義で契約される場合、たとえ代理権限がなくとも「表見代理」として、あなたが善意であるかぎり契約は有効に成立します。しかし、トラブルに巻き込まれないように役職者であっても契約を締結してよいかどうかは業界や会社規模を考慮して見極めねばなりません。
なお、会社・法人といっても下の図のようにいろいろな法人があります。形態に応じて法令の取り決めがさまざまであり、どんな法令に基づいて設立された法人なのか、代表者は誰なのかなどを把握しておく必要があります。
例えば、法人登記はありませんが組織をもった団体で、「権利能力なき社団」と呼ばれる組織の場合は、内部的には権利も義務も社団に帰属しますが、対外的には社団を代表する個人が権利・義務をもつことになります。もしこういう組織と取引をする場合は、代表者個人と取引することになります。
また図には有限会社がありませんが、会社法の施行によって有限会社は廃止されています。これまでの有限会社は「特例有限会社」といって株式会社の一種として存続する形となっています。
ただし、特例で従前どおり運営することが可能であり、会社名にも「有限会社」という文字が入っているため、従来の有限会社とほとんど変わりありません。