東京商工リサーチの調べでは、今年上半期の倒産件数は8000件を超えており、年間1万6000件のペースで推移している。倒産件数が1万5464件だった昨年1年間と比べハイペースだ。昨年のサブプライムショック以降、不況の影響が出ている。
売り上げが減り資金を借りたい企業と、貸し渋りへ動く銀行の間でミスマッチが起き、倒産が増えている。政府が打ち出した緊急保証制度と政府系金融機関を通じた大企業向け融資制度が一定の効果をあげていると考えられ、4-6月には建設業を中心に倒産件数は若干減少を見せている業種もある。景気底打ちとも言われているが、このまま景気が本格的に回復していくとは思えない状況だ。最悪期を脱しただけで、元のレベルには到達していない。
今後、業績の低迷が続けば政府の対策による効果も薄れ、倒産が増加に転じる可能性がある予断を許さない状況だ。
仮に景気が回復に向かったとしても景気上昇局面では逆に倒産が増える傾向もある。これは売上増加による運転資金の増加に資金調達が間に合わない企業が増えるからだ。
景気が上向くにせよ下がるにせよ、依然として注意が必要だ。倒産件数が このまま減少していくとは見ていない。
またメーカーの倒産が多いことも特徴といえる。昨年、一昨年は建設・不動産業が倒産増加の中心だったが、今年は自動車の下請けを中心に製造業の倒産が目立つ。大企業は在庫調整が一段落し改善してきているが、中小製造業に波及するかは注目が必要だ。
自己資本比率(自己資本を総資本で割った比率)だ。
また「利益剰余金」を総資本で割った「留保利益(率)」にも注目するとよい。資本金や資本剰余金が大きいだけで利益が出ていない場合、とても安定している企業とは言えない。
過去からの利益の蓄積を、注意深く見ていく必要がある。
借入金とキャッシュフロー(CF)の関係を見るために、借入金を月商で割った「借入金月商倍率」にも着目すべきだろう。倍率が6ヶ月を超えている企業や倍率が上昇傾向にある場合は要注意だ。さらに損益が黒字という損益計算書(PL)上の結果だけに引きずられないよう営業CFを追いかけてみることも重要だ。
やはり今後の景気動向の行方だ。
これまでの政府の資金繰り対策の効果は一段落している。衆院選後の次期政権が景気対策を含め、どういう政策を打ち出していくのか、そしてそれが企業活動にどう影響を及ぼすかに注目している。
また長期的には、会計制度の変更(国際会計基準の導入)と、民法の改正の動きもしっかりおさえておきたい点だ。
会計制度の変更では、売上高の計上基準が変わる可能性があるため、数字の連続性に注意しながら見ていかなければならない。財務の評価基準を変更する必要が出る企業もあるだろう。
また民法では債権法の全面改正が予定されており、債権回収や担保等の実務面で影響が出る可能性があり見守っていく必要があるだろう。
まずは手形決済が減少していることが挙げられる。
これは手数料や事務の軽減を目的にするものだが、手形交換高はピーク時(1990年)の10分の1になっており、これにより手形不渡りによる倒産が大きく減少している。
したがって、統計上は倒産件数に表れない事実上倒産状態になっている企業が数多くあることが考えられる。したがって、事前の情報収集・分析がより重要になってきている点がポイントといえる。
またコンプライアンス経営の要請が強くなる中、大企業だけでなく中小企業においても内部統制の仕組みづくりは重要だ。
そうした中で、信用リスクマネジメントについて、社内のルール作りが急務だろう。商売の強化と焦げ付き回避、不正検知などに最も効果が出やすいため、ここを起点に広げていくことが有効といえる。客観指標の格付を利用すると、与信管理ルールをスムーズに組み立てることができる。
また世の中の変化の流れが速くなっている中で、ルールも作って終わりではなく変化に合わせた見直しが必要になる。過去と同じような見方をしているだけでは、企業倒産は見抜けない。柔軟なルール作りが求められている。