M&A専門誌「マール」

独立行政法人労働政策研究・研修機構発行
「ビジネス・レーバー・トレンド」編集長/調査・解析部次長  荻野  登 氏

日経テレコン21 コンテンツ紹介・インタビュー

第5回 ビジネス・レーバー・トレンド

労働政策の課題を発見(2009/11/26)

「日経テレコン21」が提供する200紙誌を超える収録コンテンツ。提供元のキーパーソンに聞いたコンテンツの特徴を紹介します。
第5回は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が提供する月刊誌「ビジネス・レーバー・トレンド」について、編集長の荻野登調査・解析部次長に聞きました。(一部敬称略)


Q. 「ビジネス・レーバー・トレンド」はどういう雑誌ですか。

  労働政策に関する「課題発見型」の専門月刊誌です。雑誌創刊以前のことになりますが、「フリーター問題」を発見し、問題の重要性を旧労働省、現在の厚労省に提言したのが私どもの組織です。バブルがはじける前、フリーター問題が顕在化する前から、高卒者の追跡調査を実施していましたが、バブル崩壊以降、首都圏で高卒者の就職難が急増している事実を発見したのです。後のフリーター・ニート問題につながる先駆的な事象で、そうした課題を発見して、労働政策の企画・立案に生かしてもらうというスタンスです。

  創刊は2003年11月です。前身の「日本労働研究機構」が2003年10月、「労働研修所(厚生労働省)」と統合して「労働政策研究・研修機構」となった際、調査部門を独立させました。それまで、成果の発表は専門家向けの報告書中心でしたが、幅広く一般に読んでもらうため月刊誌「ビジネス・レーバー・トレンド」を創刊しました。分厚い報告書を読みやすくコンパクトなものに書き直し、事例調査を付けて提供するのが編集の基本方針です。労働問題は幅広い分野にまたがりますが、雑誌名に「トレンド」とうたっている通り、時代のホット・イシューを積極的に取り上げようとしています。「時事性」を意識して作っています。創刊以来ずっと編集長を務めておりますが、現在、発行部数は6000部、ホームページでのページビューも毎月2万あり、雑誌で読む以外のネット読者もいらっしゃいます。

Q. 「ビジネス・レーバー・トレンド」が取り上げているテーマや特徴を。

  少し堅い話になりますが、労働政策研究・研修機構が取り組んでいる研究分野は、(1)人口減少下における全員参加型社会の在り方(2)雇用・失業と地域(3)正規・非正規雇用など多様な働き方とワークライフ・バランス(仕事と生活の調和)(4)労使関係(5)能力開発・キャリア形成(6)労働市場での需給調整――です。労働問題に関わる分野は大体おさえていると思います。しかし、その成果を報告書だけで提供したのでは、難しすぎるので、わかりやすくリライトするここと、ケース・スタディーが必要になります。ですから、特集を組むにあたっては、事例取材で肉付けする努力をしています。11月号で取り上げた介護分野の人材確保の特集では、離職率の高さが指摘されるなかで、逆に離職率が低い事例を取り上げ、どこがカギなのかを紹介しています。

Q. 特徴は?

  (1)課題発見型(2)生データ(3)自前主義といったところでしょうか。

Q. 課題発見型とは。

  労働に関して、行政が気づいていない課題を発見して、調査し、今こういう問題が起きているとデータを出すスタンスです。労働の現実の姿を映し出す生データを政府に示す。これが最大の特徴点だといえます。これを素材に課題を先駆的に抽出・発見し、政策立案に結びつくような、報告・提言をしていきたいと考えています。

Q. 労働政策のシンクタンク機能ですか。

  はい、労働政策に関するシンクタンクという位置付けで、労働政策の企画・立案に役立つデータや情報を提供しているということになります。政策立案の当事者に現場の姿を示すことが使命だ、と考えています。

Q. 各省庁を見渡しても案外そういう組織はなさそうですが。

  そうですね。「○○政策研究所」というものは他になくはありませんが、実態調査、また継続的な研究をやっているところはあまりないと思います。現実に生起しつつある課題については、アンケート調査のほか、特に最近はヒアリング調査を実施する場面が増えてきました。