2014FIFAワールドカップ直前スペシャルインタビュー 宮澤ミシェル サッカー界を俯瞰できる解説者という立場で世界の「変化」を現場に伝える

国内外で起きている「変化」

インタビュアー:宮澤さんは、スペインリーグなど海外のゲームの解説なども担当されることが多いようですが、世界のサッカーを見ていて最近感じたことはありますか?

宮澤:2014年に入って感じるのは、世界のサッカー界の「変化」の早さですね。たとえば、私はスペインリーグ(リーガ・エスパニョーラ)の解説もしていますが、そこで一つの変化を感じました。

スペインを代表する名門チーム、FCバルセロナ対レアル・マドリードの試合のことを「エル・クラシコ」と言います。スペイン語で「伝統の一戦」という意味です。

かたやリオネル・メッシ選手や、ネイマール選手を擁するバルセロナ、かたや、クリスティアーノ・ロナウド選手に代表されるスター選手が集まったレアル。特にレアルは、世界一収入のあるサッカーチームとも言われ、世界のトップクラスの選手を次々にスカウトしてきました。そしてそのスター選手たちが個人技を発揮することで、勝ち抜いてきたのです。

ところが、リーガ・エスパニョーラでの対戦は、2013年10月、今年2014年3月とバルセロナが連勝。レアルの劣勢が続いてきました。

しかしその後のスペイン国王杯と呼ばれるコパ・デル・レイの決勝で、レアルはついにバルセロナを破り、優勝したのです。勝因は、レアルの徹底した守りでした。ふだんは個人技でゴールを狙うレアルのスター選手たちが、自分たちのプライドを削って徹底した守りに徹し、連敗を喫していた宿敵を打ち破ったのですから、驚きましたね。



インタビュアー:ここ一番で変わらなければいけないというときには、スター選手もプライドなどにこだわっていられないということですね。

宮澤:まさにその通りですね。サッカーにも潮流があって、その流れに乗り遅れたら世界のレベルから置いて行かれてしまうこともあります。

たとえばイタリアのサッカーは、その固い守りから「カテナチオ(=”かんぬき”の意)」と言われてきました。ところが今では「カテナチオ」などと言われると、イタリアの選手たちが嫌がるくらいで、スピードを活かした攻撃と守備のバランスが取れたサッカーをするチームに変わっています。

反対にブラジルなどは、日本のリーグで監督を務めた経験もあるルイス・フェリペ・スコラーリ氏を監督に迎え、彼が得意とする守備を基本としたチーム作りを行おうとしています。それは、ブラジルにはネイマール選手を始め、点を取れるストライカーはいくらでもいるので、あとは守りさえ固めれば今回のワールドカップでも優勝できると踏んでいるからです。