株式会社ミック経済研究所代表取締役・主席研究員 有賀 章 氏

株式会社ミック経済研究所
代表取締役・主席研究員
有賀 章 氏

日経テレコン21 コンテンツ紹介・インタビュー

第17回 MIC ITリポート

先駆的な分析調査で勝ち残り(2010/8/27)

「日経テレコン21」が提供する200紙誌を超える収録コンテンツ。7月14日には記事検索メニューに、IT(情報技術)関連のマーケティング・調査を手がけるミック経済研究所(東京・港)の月刊ITレポート「MIC ITリポート」を追加しました。今回はミックの創業者で代表取締役を務める有賀章氏に、同社のサービスやレポートの特徴などを聞きました(一部敬称略)。


Q. IT分野の調査・マーケティング業界は大手金融機関系、外資系を含め、競合が激しい分野です。国内独立系の御社がこれまで勝ち残ってきた原動力は何ですか。

  一つは、当社は1991年の創業以来、一貫して情報技術と通信技術、つまりICT分野に専門・特化して、自社企画のマーケティング資料の発刊、顧客から個別に依頼される受託調査、コンサルティングを主な業務として業容を拡大してきたことです。もう一つは、社員一人ひとりが、企画から取材、集計、分析、営業までの全てを“end-to-end”でカバーすることです。こうした業務プロセスを分業化したり、外部委託したりすることは決してありません。取材と集計・分析工程は密接につながっており、一体化することで、より質の高い資料ができます。また、営業を分業化しないことで、社員が顧客と接する場面が、(取材の)1回だけでなく、(取材と営業の)2回となります。それだけ接点が増え、太いパイプ(人脈)ができます。さらに、社員はお客様から直接評価を受けますから、次の成長につながります。社員自ら企画を立て、制作し、営業まで任せられると自分自身の“作品”になり、社員のモチベーション(士気)も上がります。また、全ての業務プロセス、言い換えれば収益基盤を社内化することで会社の利益も確保できます。

Q. 創業当時は大変な苦労があったのでしょうね。

  創業する以前、私自身は(調査大手の)矢野経済研究所に15年間勤め、ITや自動車部品、印刷、広告代理店、家具など様々な分野の調査を手がけていました。矢野を独立し、私を中心に4人でいまの会社を立ち上げました。MICは「マーケティング・インダストリアル・センター」の略です。矢野時代に顧客だったコンピューターメーカーなどが当社の顧客になっていただきましたが、創業から5年間はかつかつ黒字でした。当時はこの分野では矢野が最大手です。富士キメラ総研も富士経済グループの3社が統合・設立したばかりでしたし、米IDCもまだそんなに大きな存在でなく、あまり意識していませんでした。当社が心掛けたのは、粘り強い取材・調査を積み上げ、市場規模の7割程度をカバーし、3-4カ月かけて帰納法的に精度の高いデータを生み出す、という非常にオーソドックスな手法です。これを基に斬新な分析、予測を提供します。これはいまも一貫して変わりません。

Q. 事業が軌道に乗り始めた時期はいつですか。

  創業6年目に主力製品である自社企画資料の値上げに踏み切りました。当時の価格は9万円程度でしたが、これを一挙に19万円に引き上げました。結果、顧客数はそれ程減らず、売上は1.7倍に増えました。従業員はまだ6人のころで、「清水の舞台から飛び降りるような気持ち」でしたが、この価格政策が奏功し、事業は軌道に乗り始め、黒字幅が大きくなっていきました。また、10年前から、縁あって経済産業省編集の「情報サービス企業台帳」の出版・販売を担当するようになりました。IT業界で最も普及している資料(書籍)であることと、価格が2万円台と当社の資料と比べると格段に安いため、新規顧客を200社ほど開拓できたことも事業を拡大させてくれました。さらに、同じく10年前から、ベンダー調査だけでなく、エンドユーザー調査の社内体制化を進め、現在、調査ご協力いただけるパネラー(ユーザーの情報システム部門)は5300法人を超えます。パネラー数は世界一と自負しています。ユーザー調査の受託調査については、テーマによってはスクリーニング調査が当社の投資(仕込み)で終わっているため、早く、しかも安くご提供でき、数年前より、超大手顧客が、これを利用されています。

Q. 今回、日経テレコン21向けに提供を始めた「MIC ITリポート」の特徴について教えてください。

  IT業界・社会のトレンドをスピーディーかつ的確に分析・把握するためのレポートで、1999年からオンラインで会員限定向けに提供しています。当社の自社企画資料の価格は1本あたり19万円ですが、広く当社のサービス内容を知ってもらおうと、テーマを月1本に絞り、年間購読費も1万8千円に抑えています。いまでは100社程度が購読しています。見落とさることが多いニッチ(すき間)市場や、今後の市場拡大が予想される“揺らん”市場にスポットを当てています。また、各分野のリーディングカンパニーを取り上げ、その企業の強み、弱みと、今後の戦略を分析しています。