日本経済新聞社 産業地域研究所発行 「日経グローカル」
第12回 日経グローカル
地域視点でビジネスを読み解く(2010/2/24)
「日経テレコン21」が提供する200紙誌を超える収録コンテンツ。提供元のキーパーソンに
聞いたコンテンツの特徴を紹介します。
第12弾は、日本経済新聞社産業地域研究所が提供する「日経グローカル」。日経グローカルは、地域創造のための専門情報誌として、自治体・地域経営の最前線、地方議会改革やローカルマニフェストに関する最新動向のリポートなどを掲載しています。コンテンツの特徴について嶋沢裕志編集長に聞きました。(一部敬称略)
Q. 日経グローカルの収録内容についてお聞かせ下さい。
日経グローカルは2004年4月に創刊した月2回発行の地域情報専門誌です。その前身は1980年代にスタートした会員制ニューズレター「日経地域情報」ですが、自治体情報などが中心だった従来のニューズレターのテーマと引き出しを大幅に拡充し、さらに専門性にも磨きをかけた点が日経グローカルの特徴です。
新聞社の取材力とシンクタンクの分析力がコンテンツの強みに
編集・発行しているのは日本経済新聞社編集局の産業地域研究所。同研究所は日経の国内外の取材網を生かした、新聞社ならではの取材力とシンクタンクの分析力とがドッキングした組織です。今回は日経グローカルの2008年初めから直近号までの記事内容の大半について収録しました。
日経記事・データの詳報から「人もの」、B級グルメまで多彩な記事を収録
具体的なコラムとしては、日経新聞においても「グローカルView」というコラム名で内容の一部を紹介している毎号の特集記事をはじめ、官公庁や地域事情の舞台裏に迫った「ニュース&インサイド」、地方鉄道や高速道路・港湾など交通インフラ問題から地域医療・福祉、地域ブランドやまちおこしまで全国各地の様々な事情に焦点を当てた「フォーカス」や、注目すべきシンポジウムなどの「リポート」、09年4月の地方財政健全化法全面施行で今まさに重要度が増している「公会計」に関する記事などがあります。
いわゆる“人もの”も、自治体の経営手法や施策がユニークな首長へのインタビュー「自治体維新」、地域おこしの達人・キーパーソンを紹介する「地域のチャレンジャー」、「我がまちの異能公務員」といったコラムが満載で、新聞記事の分量・内容では満足できないという読者ニーズにこたえています。また、本番を迎えた“観光立国”時代に向き合う各地のリポート「観光まちづくり大作戦」や、食を活性化手法に生かした「まちおこしB級グルメ探訪」といった軟らかい記事も充実しています。
今後、収録記事は順次、過去にさかのぼって増やしていく方針です。
Q. 地方自治体や地域経営をテーマにした独自調査を数多く実施されていますが、具体的にはどんな調査があるのか教えて下さい。
日経グローカルはほぼ毎号、何らかの独自調査を実施しているといっても過言ではありません。毎年実施して既に市民権を得た調査としては、民間調査としては国内でも珍しい「全国市区予算調査」があります。財政難の中で各自治体が行革にどう取り組み、予算をいかに捻出しているのか。まだまだ贅肉が残ってはいないか。あるいは、その自治体ならではのユニークな事業や力こぶの入る重点事業は何か。各自治体の個性や頑張り度合い(あるいはその逆)が、この調査から読み解くことができます。
自治体予算調査、大学の地域貢献度ランキングなど独自調査が売り物
また最近、大学や地域社会に注目されている調査としては、「大学の地域貢献度ランキング」があります。少子化時代、生き残りに必死な大学を取り上げてマスコミ各社が大学の様々なランク付けを行っていますが、日経グローカルでは4年前から各大学の「地域貢献度」を計測、ランキング化しています。同ランキングに対する大学や自治体の注目度は予想以上に高かったですね。反響の大きさに驚きました。
行政サービス調査などは“自治体業界”のスタンダードに
ほかにも、既に“自治体業界”のスタンダードとなった全国市区の行政サービス調査(これは「行政革新度」と「行政サービス水準」の2つの調査で構成、隔年実施)というのがあります。多くの自治体や地方議会が我々のはじき出したランキングを、それぞれの行政サービス向上や行革に活用しているようです。実際、地方議会でこのランキングが取り上げられるケースが増えています。比較的、最近始めたものとしては「全国都市サステナブル度調査」(隔年)があります。
Q. 「全国都市サステナブル度調査」というのは、どんなものですか?
2007年度に初めて実施し、2009年度に2回目の調査を行った調査です(日経グローカル掲載は2010年1月から)。時代のキーワードとなった環境、つまり「環境保全度」を軸に、「経済豊かさ度」、「社会安定度」という3つの側面がバランスよく発展した都市を「サステナブル(持続可能)都市」と名付け、低炭素社会を支える都市の実力や取り組み度合いを探りました。環境保全度で57項目、社会安定度で24項目、経済豊かさ度で6項目の指標を設定し、合計87項目の指標により、全国市区のサステナブル度を評価・ランキング化しています。ネットなどをご覧になってもわかる通り、日経の独自調査として大きな話題を呼んでおり、色々な所で調査結果やランキングが引用されています。
総合順位 | 自治体名(都道府県) | 総合スコア | 環境保全度スコア | 社会安定度スコア | 経済豊かさ度スコア | |||||
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前回 | 前回 | 前回 | 前回 | 前回 | ||||||
1 | 2 | 武蔵野市(東京) | 62.1 | 60.9 | 64.8 | 58.7 | 54.1 | 52.1 | 64.8 | 74.1 |
2 | 1 | 三鷹市(東京) | 61.4 | 61.2 | 68.8 | 67.1 | 51.2 | 48.1 | 56.8 | 62.3 |
3 | 5 | 豊田市(愛知) | 61.2 | 58.7 | 60.3 | 57.4 | 49.2 | 50.5 | 75.1 | 69.6 |
4 | 47 | 鎌倉市(神奈川) | 59.7 | 54.1 | 64.8 | 52.1 | 51.3 | 50.3 | 57.9 | 61.8 |
5 | 7 | 日野市(東京) | 59.6 | 57.1 | 64.8 | 57.5 | 50.2 | 47.8 | 58.5 | 65.4 |
6 | - | 藤沢市(神奈川) | 59.1 | - | 63.9 | - | 50.6 | - | 58.1 | - |
7 | 65 | 名古屋市(愛知) | 58.7 | 53.6 | 62.7 | 59.8 | 49.8 | 48.0 | 59.7 | 46.8 |
8 | 8 | 田原市(愛知) | 58.6 | 57.0 | 53.5 | 56.2 | 53.2 | 54.0 | 74.2 | 61.4 |
9 | - | 府中市(東京) | 58.4 | - | 61.5 | - | 53.1 | - | 57.6 | - |
10 | 39 | 吹田市(大阪) | 58.3 | 54.5 | 61.5 | 53.0 | 50.5 | 50.0 | 59.5 | 62.0 |
EUの指標を手本に開発した「全国都市サステナブル度調査」
サステナブル都市の本場である欧州では、EUがやはり環境、経済、社会の3つの側面にまたがる広範な都市持続可能性指標を開発しています。産業地域研究所では研究員がヨーロッパへ出向いてEUの指標作成などを取材・分析しました。それを改変して日本版として日の目を見たものです。第2回となる今回の調査では、総合ランキングのトップ(東京23区を除く)は東京都武蔵野市(前回は2位)、2位に三鷹市(同1位)、3位に愛知県豊田市(同5位)、と続き、4位には地域ぐるみのCO2削減計画づくりに取り組む神奈川県鎌倉市(同47位)が大きく浮上しました。上位には経済力のある大都市圏の都市が多く、財政力のある都市が環境関連の施策を積極的に展開している傾向が浮かび上がりますが、地方都市でも広島市や栃木県小山市などの躍進が目立ちます。