朝鮮日報 東京支局長
辛貞録(シンジョンロク)氏
第8回 韓国紙「朝鮮日報」
韓国紙で最大の影響力(2010/1/14)
「日経テレコン21」が提供する200紙誌を超える収録コンテンツ。提供元のキーパーソンに聞いたコンテンツの特徴を紹介します。第8弾は、韓国紙「朝鮮日報」の東京支局長の辛貞録(シン・ジョンロク)氏に聞いた。(一部敬称略)
Q. 朝鮮日報についてご紹介ください。
「朝鮮日報」は、韓国を代表する新聞です。発行部数は現在、約210万部と韓国紙で最大、創刊は1920年と歴史も最も古く、社会への影響力も一番大きいとの評価を受けています。創刊した1920年には東亜日報も誕生していますが、朝鮮日報に約1カ月遅れての創刊でした。
Q. 韓国にはどういう新聞がありますか。
韓国ではソウルで発行される中央紙(全国紙)が10紙ほどあります。「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」のほか、「ハンギョレ新聞」「韓国日報」「京郷新聞」「ソウル新聞」「国民新聞」「レイル新聞」といったところです。地方紙もあります。日本の都道府県に相当する広域自治体が16あり、広域自治体ごとに地方紙があります。地方紙には、釜山の「釜山日報」、大邱の「毎日新聞」などがあります。中央紙の中には、経済紙も3紙ほどあります。「毎日経済新聞」「韓国経済新聞」「マネートゥデイ」などです。「マネートゥデイ」はインターネット新聞の性格が強い新聞です。
Q. 朝鮮日報の特徴は?
朝鮮日報は歴史的にも部数の上でも韓国を代表する新聞ですが、特に強調しておきたいのは、影響力の点です。韓国国民に対する「一番信頼する新聞は?」という質問への調査で、一番の評価を受けるのが朝鮮日報です。特に政界、経済界に対する影響力がものすごく大きいと言えます。
長い歴史のある新聞ということもあって、年配層の支持率が高いです。そもそも、韓国は分断国家という特質があるため、様々な理念的な葛藤を抱えている国です。1948年に大韓民国が建国され、1950年に「韓国戦争」(日本でいう「朝鮮戦争」「朝鮮動乱」)があり、その後の経済発展の時代をリードしてきた世代が一番好きな新聞です。読者の年齢層としては、40代から60代の時代や社会をリードする人々が読んでくれています。
また地方にも浸透しています。日本と異なって、韓国では中央紙(全国紙)の影響力が地方紙に比べ強い。韓国の人口が4800万人と、日本に比べ少ないこともあって、田舎でも中央紙の影響力が大きいという特徴があります。
Q. 記者の数や海外支局などを教えてください。
記者は、日本の全国紙に比べると少ないですが、320人ぐらいいます。
国内支局は約10支局あり、海外支局は東京、ワシントン、ニューヨーク、北京、香港、パリ、モスクワにあります。
海外特派員に関しては、各支局に派遣されている常駐特派員とは別に「巡回特派員」という朝鮮日報特有の制度をもっています。半年とか1年かけて、東欧、中南米、アラブ、北アフリカなど世界の地域ごとに派遣します。派遣された地域の国を1カ月ずつ程度、計6カ国ぐらい転々としながら取材する特派員です。5年ほど前に導入した制度です。インターネットで世界がつながる時代になりましたから、常駐特派員を増強するばかりでは、世界の今を伝えるうえではダメかもしれない、という判断が、新制度導入の背景にありました。若い世代に経験を積ませる狙いもあって、若手の記者を送り出していますが、人気の職場です。ホテル住まいで転々としながら、現地から記事を送ってきます。
Q. 韓国での新聞のネット版を巡る競争は、日本以上に熾烈なスピード感ある戦いになっているようですが。始めた狙いや最近の状況は?
1994年にインターネット版を始めました。韓国と日本ではネットと新聞のあり様が異なっています。日本の新聞社は紙の新聞に載せている記事の大体30%ぐらいをネット上に出していると聞きますが、韓国では100%ネットに出しています。
韓国ではネット上の記事の競争は厳しいものがあります。またポータルサイトの存在も強力です。新聞社も独自サイトを設けていますが、1位から4位は「Naber(ネイバー)」「Daum(ダウム)」「Nate(ネイト)」「Cyworld(サイワールド)」とポータルサイト勢で、朝鮮日報のサイトが、ニュース専門サイトですが、5位につけています。
ニュースはすべて無料で見られますが、有料の「プレミアム・サービス」もあります。人物情報やモバイル・サービス、PDF、限定会員向けのニューズレター、教育やマネーに関する特別な情報を提供する「モーニング・プラス」といったサービスです。このほか、ネット広告の収入もあるので、ネット版でも収益は稼げています。もちろん、新聞の収入に比べれば、ネットの収入は一ケタ少ないですが、心配は要らない状況です。